七月なので七夕にまつわる神社を。

◆機物神社 鳥居と茅の輪
機物神社 鳥居と茅の輪

機物神社
【はたものじんじゃ】


鎮座地: 大阪府交野市倉治一丁目濱の池1-7

包括: 神社本庁

御祭神:
天棚機比売大神【あまのたなばたひめのおおかみ】
栲機千千比売大神【たくはたちぢひめのおおかみ】
地代主大神【とこしろぬしのおおかみ】
八重事代主大神【やえことしろぬしのおおかみ】

創建: 不詳

社格等: 旧村社


 今や関西では七夕祭といえばこの神社というほど有名になったが、祭事が復活したのは昭和五十四年(1979)。長らく途絶えていたのを現宮司が甦らせた。
 機物神社の鎮座する交野ヶ原(枚方市・交野市にまたがる地域)は日本における七夕発祥の地ともいわれ、一帯には七夕にまつわる地名や伝説が正に星のごとくに散らばっている。
 祭神の棚機比売と栲機千千比売は本来同じ神と考えられる。要するに栲機千千比売から「織姫」としての属性を切り離したのが棚機比売ということだろう。

 一説に、元は交野忌寸の祖である庄員なる漢人を祀る社であったとも。庄員は秦氏系統ともいわれ、即ち「秦者」がいつしか機物に転じ、七夕説話と結びついたというのが神社側の採用している由緒である。

◆機物神社とおりひめちゃん(交野市のゆるキャラ)
機物神社とおりひめちゃん

 一方で、鎮座地の「倉治」という地名には物部氏の影がちらつく。
 谷川健一氏は『白鳥伝説』において、各地の「クラジ」という地名と物部氏の関わりを指摘している。実際に交野郡周辺は肩野物部と呼ばれる物部の一派が本拠とした地であるから、倉治が物部由縁の地名であるとしても不自然ではない。ではクラジとは何か? 谷川氏は高倉下【たかくらじ】、及び兄倉下【えくらじ】・弟倉下【おとくらじ】とのつながりを示唆する。
 兄倉下・弟倉下は神武天皇東征に際して抵抗勢力として登場する大和国南部の豪族である。
 また紀伊熊野の高倉下は神武天皇に布都御魂剣を献上した人物である。布都御魂は石上神宮に祀られる霊剣であり、物部氏と深く関わるものであることは言うまでもない。
『先代旧事本紀』はこの高倉下を尾張氏の祖である天香語山命【あめのかごやまのみこと】の別名とする。天香語山の父は火明命【ほあかりのみこと】だが、『先代旧事本紀』は物部氏の祖神饒速日命【にぎはやひのみこと】を「天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊」と称んで火明命と同神としているので、天香語山(高倉下)は饒速日の子ということになる。このことから、クラジを物部に連なる人物または氏族の名と谷川氏は推測する。
 火明命は天孫瓊瓊杵命【ににぎのみこと】の兄であり、その母は栲幡千千姫。つまり高倉下の祖母、饒速日の母が機物神社に祀られていることになる。
 機物の「物」は物部に由来する、というのはさすがに穿ち過ぎだろうか。

 肩野物部の衰退後、交野の地の饒速日を祀る神社は住吉神にすり替えられるなど、物部の神の名は隠された節がある。機物神社もまた、時代の波に翻弄されて様様に変貌を遂げて来たのだろう。織姫と彦星を隔てる天の川の波は穏やかにあらず、ということか。

◆機物神社 御朱印 「機姫乃宮」
機物神社 御朱印

 機物神社の七夕祭は七月六日(宵宮)・七日(本宮)の二日間。

関連記事(七夕にまつわる神社)



参考文献:
◇谷川健一『白鳥伝説』 小学館ライブラリー 1997


大きな地図で表示

神道/両部神道/吉田兼倶/復古神道/教派神道/国学/本居宣長/平田篤胤/水戸学/天皇/山陵/神ながらの道/仏教と神道/儒教と神道/陰陽道/修験道/神祇官/太政官/大教院/皇典講究所/神宮皇学館/神道指令/古事記/日本書紀/風土記/万葉集/古語拾遺/先代旧事本紀/延喜式/神道五部書/神社縁起/伊勢信仰/八幡信仰/熊野信仰/高天原/天神地祇/産霊/神漏岐神漏美命/和魂・荒魂/禊祓/神恩・恩頼/天津罪・国津罪/霊魂観/他界観/敬神生活/神道伝授 など100項目の要語解説

by G-Tools

このエントリーをはてなブックマークに追加