奈良県大和郡山市は金剛山寺(通称矢田寺)の特別拝観に行ってきました。
 普段は立ち入ることのできない本堂内陣に入堂し、御本尊地蔵菩薩をはじめ諸尊と対面することができました。

矢田山金剛山寺
【やたさんこんごうせんじ】


所在地: 奈良県大和郡山市矢田町寺内3506

宗派: 高野山真言宗

御本尊:
地蔵菩薩

創建: 天武天皇四年(AD675)

開基: 天武天皇

開山: 智通僧正

寺格等: 高野山真言宗別格本山

別称/旧称: 矢田寺 矢田地蔵


◆金剛山寺 山門
金剛山寺 山門

 あじさい寺とも呼ばれる矢田寺。境内には紫陽花がところ狭しと咲き誇っていました。

◆金剛山寺の紫陽花
金剛山寺 紫陽花

 御本尊の地蔵菩薩は「矢田型地蔵」と呼ばれ、一般的な地蔵とは違い錫杖を持たない独自の姿をしています。平安時代の作。
 左脇侍の十一面観音は創建当初の本尊と伝えられる奈良時代の像。
 右脇侍の吉祥天は宿院仏師源次一門の手による室町時代の像。
 他に二天、裏堂の地蔵菩薩、阿弥陀如来像なども見ることができました。

 現在の本尊である地蔵菩薩が祀られる経緯については、中興開山の満米上人にまつわるおもしろい逸話が伝わっています。
 ある時、閻魔王が人びとを裁くことに心を痛めて、菩薩戒を受けたいと欲し、小野篁に相談する。篁は生き身でありながら人間界と閻魔王府を行き来していたという不思議な人物。篁はそれならばと矢田寺の満慶上人に依頼。上人は冥府へ赴き閻魔王に戒を授ける。その礼として上人は地獄見物を許されるが、その際、衆生を一身に救う地蔵菩薩に出会う。矢田寺へ戻った上人は直ちに仏師を呼び地蔵菩薩の姿を彫らせるが、なかなか思うようにいかない。そうこうしているとある日四人の翁が現れ、地獄で見た姿とそっくり同じ見事な地蔵菩薩像を完成させ春日山に向かって飛び去った。実は翁たちは春日大社の四社明神であった。上人はその像を矢田寺に安置、その霊験はたちまち評判となった。余談だが、満慶上人は閻魔王府を去るにあたり閻魔王から漆塗りの箱を贈られた。箱には米が入っていて、いくら使っても減ることがなく常に米で満たされていた。それでいつしか満米上人と呼ばれるようになった。
 こんな話です。この縁起で語られる地蔵像のいわば失敗作が、裏堂に本尊と背中合わせで安置されている像で、試みの地蔵菩薩像と呼ばれています。

◆金剛山寺 本堂
金剛山寺 本堂

 普段は閉じられている閻魔堂も期間中開扉されており、閻魔王の迫力ある姿を見ることができます。
 巨大な閻魔王の左右には十一体の像が並んでいます。そのうち九体は冥府の裁判官で閻魔を合わせて十王。のこりの二体は脱衣婆と倶生神とのことでした。倶生神は男女の神とされますが一体のみでした。また冥府の書記官である司命と司録は見当たりませんでしたが、司録像は奈良国立博物館に寄託されているとのこと。

◆金剛山寺 閻魔堂
金剛山寺 閻魔堂

矢田山金剛山寺 閻魔堂
【やたさんこんごうせんじ えんまどう】


所在地: 奈良県大和郡山市矢田町

宗派: 高野山真言宗

御本尊:
閻魔王

創建: 室町時代


 塔頭の南僧坊で閻魔堂の御朱印をいただきました。

◆金剛山寺閻魔堂 御朱印 「閻魔大王」
金剛山寺閻魔堂 御朱印

 本堂特別拝観・閻魔堂開扉は六月三十日までです。

 さて、次はやはり特別拝観期間中の東明寺へ向かいます。矢田寺からは直線距離で北へ一キロメートルほどです。
次の記事へ続く》



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