御崎神社を後にし、日ノ御埼を目指して海岸線を西へ辿る。
しばらく走ると三尾浦に到る。三尾はカナダへの移民が多く出た地域で、通称アメリカ村として知られる。
三尾浦の東端、西に向かって突き出た龍王崎の断崖上、樹林の中に三尾地区の産土神、龍王神社が鎮座する。
◆龍王神社 一の鳥居

◆龍王神社 拝殿 扁額「龍王宮」

創建時期は不明だが、元和三年(1617)銘の棟札が現存する。三尾浦は『万葉集』に「三穂の浦」として詠われ、神社のある龍王崎には同じく『万葉集』に登場する「三穂の石室」と伝わる岩窟もあって、古くから開けた土地のようだから、創祀はかなり遡れるのではないかと素人考えではあるが思う。
祭神は海神である豊玉彦。猿田彦は後から合祀されたようだ。ただ、地元には豊玉彦ではなく豊玉姫(乙姫)とする伝承もあるらしい。
言うまでもなく、航海の安全を司る龍神として三尾の漁民に祀られてきたわけだが、龍は雨を降らす存在でもあり、雨乞いの対象としても大いに信仰され、近隣地域にもその神威はよく知られていたという。
神社の南の海中に亀の形をした岩礁があるといい、龍王、すなわち豊玉彦が龍宮から亀に乗って顕現した所と言い伝えられている。境内の南側に拝所と称して小さな鳥居と祠があり、そこから海を覗き見ることができるようになっている。おそらくその方向に岩礁があるのだろう。
◆龍王神社 拝所から見る海

そういったいわれのため岩礁周辺の海域は禁漁区になっていたが、ある時殿様がこの場所で宴を開き、家来にアワビを採ってこさせた。するとたちまち大嵐となったため、神の怒りを畏れた殿様は家来を生贄として海に突き落とした。嵐は止んだが、殺された家来が夜毎殿様の夢枕に立つようになる。そこで殿様は海に阿弥陀如来像を沈めて家来の冥福を祈った。以来、龍王の出現した岩礁は阿弥陀礁【あみだばい】と称ばれるようになったそうだ。
◆龍王神社 拝殿

◆龍王神社 本殿

拝殿の前に異形の巨樹が生えている。アコウという亜熱帯植物で、またの名を「絞め殺しの木」。着生植物の一種で、他の植物などに張りついて育ち、気根(地中ではなく空気中に露出している根)を垂らしていずれは親樹を覆い尽くしてしまう。熱帯雨林のような周囲の樹木が高く繁っている環境でてっとり早く日光にありつくために獲得した生育方法だそうだ。
◆龍王神社のアコウ



このアコウ、龍王がこの地に上陸する際に険しい断崖を上がれずに困っていると、雌雄の龍となって崖下まで伸び、龍王を手助けしたという話も伝わる。確かに、根元で二つに分かれ、うねうねと蠢くようなその姿は、二匹の龍を連想させなくもない。
それにしても先述した、祭神が実は女神(豊玉姫)であるという古老の言い伝えは少し気になる。
参考文献:
◇美浜町史編集委員会(編)『美浜町史 下巻』 美浜町 1991
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しばらく走ると三尾浦に到る。三尾はカナダへの移民が多く出た地域で、通称アメリカ村として知られる。
三尾浦の東端、西に向かって突き出た龍王崎の断崖上、樹林の中に三尾地区の産土神、龍王神社が鎮座する。
◆龍王神社 一の鳥居

龍王神社
【りゅうおうじんじゃ】
鎮座地: 和歌山県日高郡美浜町三尾前出442
包括: 神社本庁
御祭神:
豊玉彦神【とよたまひこ】
猿田彦神【さるたひこ】
創建: 不詳
社格等: 旧村社
別称/旧称: 海神社 綿津見神社
【りゅうおうじんじゃ】
鎮座地: 和歌山県日高郡美浜町三尾前出442
包括: 神社本庁
御祭神:
豊玉彦神【とよたまひこ】
猿田彦神【さるたひこ】
創建: 不詳
社格等: 旧村社
別称/旧称: 海神社 綿津見神社
◆龍王神社 拝殿 扁額「龍王宮」

創建時期は不明だが、元和三年(1617)銘の棟札が現存する。三尾浦は『万葉集』に「三穂の浦」として詠われ、神社のある龍王崎には同じく『万葉集』に登場する「三穂の石室」と伝わる岩窟もあって、古くから開けた土地のようだから、創祀はかなり遡れるのではないかと素人考えではあるが思う。
祭神は海神である豊玉彦。猿田彦は後から合祀されたようだ。ただ、地元には豊玉彦ではなく豊玉姫(乙姫)とする伝承もあるらしい。
言うまでもなく、航海の安全を司る龍神として三尾の漁民に祀られてきたわけだが、龍は雨を降らす存在でもあり、雨乞いの対象としても大いに信仰され、近隣地域にもその神威はよく知られていたという。
神社の南の海中に亀の形をした岩礁があるといい、龍王、すなわち豊玉彦が龍宮から亀に乗って顕現した所と言い伝えられている。境内の南側に拝所と称して小さな鳥居と祠があり、そこから海を覗き見ることができるようになっている。おそらくその方向に岩礁があるのだろう。
◆龍王神社 拝所から見る海

そういったいわれのため岩礁周辺の海域は禁漁区になっていたが、ある時殿様がこの場所で宴を開き、家来にアワビを採ってこさせた。するとたちまち大嵐となったため、神の怒りを畏れた殿様は家来を生贄として海に突き落とした。嵐は止んだが、殺された家来が夜毎殿様の夢枕に立つようになる。そこで殿様は海に阿弥陀如来像を沈めて家来の冥福を祈った。以来、龍王の出現した岩礁は阿弥陀礁【あみだばい】と称ばれるようになったそうだ。
◆龍王神社 拝殿

◆龍王神社 本殿

拝殿の前に異形の巨樹が生えている。アコウという亜熱帯植物で、またの名を「絞め殺しの木」。着生植物の一種で、他の植物などに張りついて育ち、気根(地中ではなく空気中に露出している根)を垂らしていずれは親樹を覆い尽くしてしまう。熱帯雨林のような周囲の樹木が高く繁っている環境でてっとり早く日光にありつくために獲得した生育方法だそうだ。
◆龍王神社のアコウ



このアコウ、龍王がこの地に上陸する際に険しい断崖を上がれずに困っていると、雌雄の龍となって崖下まで伸び、龍王を手助けしたという話も伝わる。確かに、根元で二つに分かれ、うねうねと蠢くようなその姿は、二匹の龍を連想させなくもない。
それにしても先述した、祭神が実は女神(豊玉姫)であるという古老の言い伝えは少し気になる。
《次の記事へ続く》
参考文献:
◇美浜町史編集委員会(編)『美浜町史 下巻』 美浜町 1991
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