丹波国に出雲という所がありましてな、出雲国より大社の御分霊を遷して、立派なお社が建っております。志田某とかいうお人の領地ですが、この人が秋の頃に、聖海上人をはじめ多勢の人を招いて、「出雲詣でに是非いらしてください。おはぎを御馳走しますよ」と言うので、皆で一緒に行ったそうです。 ...
彌榮神社〔東大阪市中小阪〕 木村重成死地へと赴く
東大阪市下小阪の司馬遼太郎記念館は、作家司馬遼太郎没後五年の平成十三年(2001)、氏の自宅隣に開館した。それとほとんど隣接するように、二つの神社が鎮座している。一つはすぐ西にある下小阪の小坂神社、そして南にあるのが旧中小坂村の鎮守だった彌榮神社だ。彌榮神社は江戸時代まで牛頭天王宮と称した。創建時期は不詳。天正年間(1573~1592)織田信長と石山本願寺の戦いで村ともども灰燼に帰し、慶長五年(1600)に片桐且元により再建されたと伝える。 ...
小坂神社〔東大阪市下小阪〕 生命と豊穣の神への祈り
河内国若江郡の北小坂村は、豊臣秀吉の許しを得た西堤村の人びとによって新たに開拓された。その鎮守社として大和吉野より子守勝手明神を勧請したのが現在の小坂神社である。天正二十年(1592)豊臣秀吉の許しを得て、小坂の北の西堤村から十八軒の家がこの地に移り住み、北小坂村と称した。新たに開いた農地が水に恵まれ作物が実るよう、吉野の子守明神(吉野水分神社)と勝手明神(勝手神社)を迎えて小坂神社は創建された。 ...
龍神社〔大阪狭山市岩室〕 最古のダム狭山池を守る雌雄の龍神
河内国丹南郡の狭山池には大昔から雌の大蛇が棲んでいたという。一方、石川郡喜志(現富田林市)の粟ヶ池には雄の大蛇がいて、夫婦の間柄だった。この雌の大蛇、毎夜夫のもとに通うのだが、その巨体で田畑の作物を薙ぎ倒し、運悪くそこに居合わせた人や牛馬を丸呑みにしながら行くものだから、 ...
大津大神宮〔大津市小関町〕 湖都のお伊勢さんと近代神社史
大津大神宮は滋賀県神社庁に隣接して鎮座している。天照皇大神と豊受大神、即ち伊勢両宮の神を祀る。創建は明治十一年(1878)と比較的新しい神社だ。この神社について語るためには、近代神社政策の歴史に触れないわけにはいかない。明治五年(1872)政府は神道を軸とした国民教化を目的として教部省を新たに設置、教導職制度を設けて神官・僧侶らをこれに任命した。 ...
壺井八幡宮〔羽曳野市壺井〕 武門の棟梁河内源氏発祥の地
唐の宰相武元衡が政敵の放った刺客に殺害されたとき、宮中に仕えていた詩人白居易は、暗殺者を直ちに探し出して捕らえるべきであると皇帝に上奏した。しかしこのことが越権行為として咎められ、江州司馬に左遷となった。新たな赴任地に建てた小さな草堂の壁に、白居易はこの詩を書きつけた。 ...
門真神社〔門真市元町〕 商売運を招く笑い猫のはなし
門真市元町の細い路地を歩くと、ほどなく目当ての石鳥居が現れた。白砂の敷かれたさほど広くない境内をまっすぐに延びる敷石の向こうに、大きく湾曲した唐破風が印象的な拝殿が見える。門真神社は旧河内国茨田郡門真四番村の鎮守として、地元では「四番のお宮さん」と称ばれ親しまれてきた。古くは南宮・中宮・北宮の三社があり、門真神社はそのうちの中宮だという。 ...
竹渕神社〔八尾市竹渕〕 神武天皇を隠した竹藪と龍が棲む神池
大阪府八尾市の、西に向かって出っ張り、大阪市平野区に囲まれてほぼ飛び地のようになっている地域は、旧渋川郡竹渕(竹淵)村にあたる。竹渕は正式な住所としては現在「たけふち」と訓ませるが、地元では古来「たこち」と称している。『和名抄』は「多加不知【たかふち】」と訓ずる。その南端に、竹渕神社は広い社域を横たえている。 ...
吉田春日神社〔東大阪市吉田〕 聖地花園を見守る「ラグビー神社」
東大阪市にある花園ラグビー場は昭和四年(1929)に開場された日本初のラグビー専用スタジアムであり、全国高校ラグビーの会場として知られている。「花園」といえば高校生ラガーの憧れの地だ。その程近くに「ラグビー神社」の通称を持つ吉田春日神社はある。選手やファンが必勝祈願に訪れる、ラグビーの守り神だ。 ...
薬師寺〔奈良市西ノ京町〕 玄奘三蔵会大祭と「仏教と刀」「噂の刀展」
一部で熱狂的に盛り上がっている薬師寺「仏教と刀」「噂の刀展」へ行ってきた。この日はちょうど玄奘三蔵会大祭も執り行われていて、玄奘三蔵法師の旅を描いた伎楽も観覧することができた。 ...
神立辻地蔵と水呑地蔵〔八尾市神立〕 弘法大師の霊泉へと続く在原業平の通い道
摂津玉造から十三峠を越えて大和龍田までを結ぶ道を十三街道という。古く龍田越えと称した幾筋かの道のひとつだ。旧河内国高安郡神立村(現八尾市神立)辺りから東は「なりひら道」と称ばれることもある。美男の代表格にして六歌仙に数えられる在原業平が女に逢うために八百度も往還したという故事による。『伊勢物語』の「筒井筒」の段に描かれている、有名な「高安の女」だ。 ...
高山右近の列福を遅れ馳せながら知った夜は『かくれキリシタンゴ』を聴いて眠れ
ニュースサイトを何の気なしに見ていたら、SF(すこし・ふるい)なニュースが目に飛び込んだ。今年一月のもの。高山右近、福者認定――。へえ、と人差し指が動いた。福者(Beatus,Blessed)というのはカトリックで聖人に次ぐというか、聖人の前段階みたいな位置づけの人のこと。もう随分前から列福運動ってやつをやってたと思う。死後四百年経ってそれが実ったわけだ。 ...